水晶体
水晶体は透明で血管・神経を欠いています。虹彩後面と硝子体前面との間の後房にあります。前後径は約4mmで50歳をこえると5mmになります。直径は約9mm
水晶体は角膜とともに大事な光学系の構成要素です。水晶体の屈折力は約20diopterですが、毛様体筋が収縮するとチン小帯が弛緩して水晶体の形態はその髙い自己弾性のため球状となり、屈折力が増し、33diopterまでになります。
加齢現象
水晶体は一生発育を続けるため、体積・重量ともに年齢とともに増加します。しかし、眼内圧および水晶体嚢に取り囲まれているため自由に体積を増大させることができず、加齢により核の圧縮、硬化が生ずるこの結果、
- 水晶体の弾性の低下(調節力の低下)
- 屈折力の増加(近視化)
- 体積の増加(閉塞隅角緑内障になりやすい)
- 色調の変化
水晶体の栄養は房水循環によって行われています
水晶体の位置異常
水晶体の先天的な位置異常を水晶体変位、後天性の異常を水晶体脱臼といいます
水晶体がずれています。
1 水晶体変位を起こす基礎疾患
Marfan症候群 常染色体優勢遺伝
3徴候 1水晶体変位、骨格異常、心血管異常
全身所見 痩身、高身長、四肢および指が長い
脊椎後側湾、漏斗胸、鳩胸
上下大動脈びまん性解離性動脈瘤
眼所見 水晶体変位 近視 緑内障 網膜剥離
Marchesani症候群 球状水晶体 緑内障の合併
ホモシスチン尿症 知能発育不全 痙攣発作 Marfan症候群に似た体格、水晶体変位、白内障、緑内障の合併
水晶体脱臼
- 外傷性水晶体脱臼:鈍的外傷によるチン小帯の完全な断裂により起こる。脱臼した水晶体は硝子体内に落下する。時には前房内に脱臼することもあり、急性緑内障が起こる
- 水晶体亜脱臼:部分的なチン小帯の断裂で水晶体の一部が脱臼する。チン小帯の断裂している部分の虹彩はやや後退し、眼球運動でこの部分の虹彩が振動する(虹彩震盪症)
白内障
水晶体の混濁を白内障といいます。混濁の部位や程度などにより分類されます
- 混濁の程度による分類
初発白内障 白内障の初期
未熟白内障
成熟白内障
過熟白内障 過熟白内障で急激に膨化し前房の浅くなったものを膨張白内障といいます
- 混濁の部位による分類
極白内障:前おびび後極に混濁をみるもの
層間白内障:核に相当する部分の周囲に混濁のあるもの
核白内障:核の部分の混濁
皮質白内障:皮質の混濁
全白内障:水晶体全体が混濁したもの
後嚢下白内障:後嚢下に混濁をみるもの
発生時期による分類
先天性白内障 先天性の水晶体の混濁
混濁の程度は様々。遺伝性、特発性の他に胎生期に母体が受けた感染症(風疹白内障)
治療:混濁の強いものは早急に手術。
老人性白内障 加齢現象によりおこったもの
発生原因による分類
外傷性白内障 穿孔性外傷で水晶体嚢が破裂すると水晶体線維が膨化変性し混濁します
鈍的外傷で水晶体嚢の破裂がなくても嚢下に皿状のまたは菊花状の混濁がみられ、水晶体前嚢上に瞳孔領に一致した虹彩色素の沈着
であるVossius輪を認めることがおおい
その他 電撃・放射線・赤外線照射が原因となることもある。
併発白内障 他の眼疾患が原因で発生した水晶体の混濁、後嚢下の混濁にまることが多い
長期間の眼内炎(とくにぶどう膜炎)や硝子体出血があると罹患眼は進行した白内障になることがあります
また硝子体手術後にガスを注入すると白内障が進行します
ステロイドの長期間使用時にも同様な混濁(ステロイド白内障)が出現します
全身疾患に合併する白内障
糖尿病、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、アトピー、Werner症候群などに合併することが多い
中毒性白内障
ステロイド白内障:ステロイドの局所または全身投与により発症します
放射線白内障
後発白内障:白内障手術後に発生するもの
老人性白内障 加齢現象による水晶体の混濁、一般に50歳以上の人にみとめ
他に原因を見出すことが出来ないもの。最も頻度が高い
症状:視力低下、眩しさ、かすんでみえる、だぶってみえる
その他の水晶体の変化
偽落屑症候群 水晶体嚢表面、毛様少帯、毛様体上皮や線維柱帯に白色の羽毛状の物質が沈着し、水晶体嚢の表面が剥げ落ちたように見える
臨床所見 視機能に直接影響がない。50%は両眼性
緑内障を合併する。
散瞳不良、チン小帯脆弱により白内障手術の合併症が増す可能性が高い