糖尿病網膜症の進行度、重症度の分類には大きく3つあります。
国際重症度分類、Davis分類、新福田分類があります。
国際重症度分類では
網膜症なし
異常所見なし
軽症非増殖網膜症
毛細血管瘤のみ
中等症非増殖網膜症
毛細血管瘤以上の病変が認められる重症
非増殖網膜症よりも軽症のもの
重症非増殖糖尿病網膜症
眼底4象限で20個以上の網膜内出血
2象限以上で明瞭な静脈数珠状拡張
明確な網膜内細小血管異常
上記のいずえかを認める
増殖網膜症
新生血管または硝子体出血・網膜前出血のいずれかを認めるもの
Davis分類
単純糖尿病網膜症
毛細血管瘤
網膜点状・斑状・線状出血
硬性白斑・網膜浮腫
(少数の軟性白斑)
増殖前糖尿病網膜症
軟性白斑(綿花様白斑)
静脈異常
網膜内細小血管異常
(網膜無灌流領域:蛍光眼底造影)
増殖糖尿病網膜症
新生血管(網膜・乳頭上)
網膜前出血,硝子体出血
線維血管膜
牽引性網膜剝離
新福田分類
Al:軽症単純網膜症
毛細血管瘤,点状出血
A2:重症单純網膜症
しみ状出血,硬性白斑,少数の軟性白斑
Bl:増殖前網膜症
軟佳自斑,網膜浮腫,線状•火焰状出血
静脈拡張
A3:軽症増殖停止網膜症
陳旧性の新生血管
A4:重症増殖停止網膜症
陳旧性の硝子体出血
A5:重症增殖停止網膜症
陳旧性の(線維血管性) 増殖組織
B2:早期増殖網膜症
乳頭に直接連絡しない新生血管
B3:中期増殖網膜症
乳頭に直接連絡する新生血管
B4:末期増殖網膜症
硝子体出血・網膜前出血
B5:末期増殖網膜症
硝子体への(線維血管性)増殖組織を伴うもの
糖尿病網膜症で3つの重症度分類をお示ししましたが、施設や眼科の先生によってそれぞれ別の重症度分類をつかってわかりずらいですが、糖尿病網膜症の重症度は簡単にいうと、3段階あります。
まず糖尿病があるのに、網膜症のない状態。糖尿病になったからといって直ちに全員糖尿病網膜症になるわけではありません。糖尿病コントロール不良時期が何年もあり、網膜症になります。
最初の初期段階は単純糖尿病網膜症と呼ばれ、眼底に小さな出血(点状出血)や毛細血管瘤、硬性白斑(老廃物がたまった状態)があらわれます。この段階では眼科的な治療は不要で糖尿病コントロールと眼科経過観察の状態です。
単純糖尿病網膜症の眼底写真。赤い点々が出血で、白いつぶつぶが硬性白斑です。
毛細血管瘤の蛍光眼底写真 点滴で造影剤を流して眼底写真を撮影する検査です。白い点々が毛細血管瘤です。血管の瘤です。
さらに網膜症が進行すると増殖前糖尿病網膜症という状態になります。この段階頃から眼科的治療、いわゆる網膜光凝固術が必要になってきます。血管が詰まる状態になっています。
軟性白斑とは血管がつまって網膜が浮腫状になっている状態です。
前増殖糖尿病網膜症の蛍光眼底造影写真 網膜の血管が閉塞して、造影剤が染まっていな部分があります(青で囲った部分)。
次に増殖糖尿病網膜症になると新生血管が生えてきます。赤い部分は新生血管から造影剤が漏れ出ている状態です。
正常な血管からは血管ないの血液は漏れないですが、新生血管からは血管ないの血液の成分(赤い血球成分やそれ以外の血漿成分)が容易に漏れ出てしまいます。
さらに黄斑部(視力に大事な中心部の網膜)に血漿成分が漏れ出て黄斑浮腫という状態になり視力低下を起こします。
黄斑浮腫の蛍光眼底造影写真 黄斑部に造影剤が漏れ出ています
黄斑浮腫の網膜断層撮影像 網膜の浮腫がみられます。
最終的に網膜症が進むと牽引性網膜剥離や硝子体出血や血管新生緑内障という状態になり失明します。
牽引性網膜剥離の眼底写真
虹彩の血管新生 虹彩に血管新生が起こり眼圧上昇(緑内障)になります。