強膜とは角膜とともに眼球の構造をつかさどる3層構造のうち一番外側の組織で、強度の強い膜です。眼球の形状をつくり、外部からの衝撃、外傷から守っています。
強膜の上に結膜(しろめ)がかぶっているため、外からの細菌感染やウイルス感染から守られています。そのため外界に露出した結膜での炎症(結膜炎)はよく起こしますが、
強膜に感染などの炎症を起こすことはまれです。
強膜炎の約半数は膠原病などの全身性疾患に随伴するために、眼局所の治療のみではなく、潜在する全身性疾患を検索する必要があります。強膜炎は非感染性炎症と感染性炎症に大別され両者は治療法が異なるために早期の鑑別が重要になります。
強膜炎患者の約25~50%に全身性の免疫関連疾患がみられ、強膜炎の病態には免疫応答が関与すると考えられます。平均年齢は約50歳で女性に多いいです。
症状と眼所見
自覚症状は強い眼痛と充血が主ですが、顔面への放散痛、視力低下や眼球運動障害が生じることもあります。他覚所見は、前部強膜炎では強膜血管の拡張に加え、強膜の暗赤色の結節、菲薄化や壊死、虹彩毛様体炎や角膜周辺部の浸潤や潰瘍を見ることがあります。
後部強膜炎では、滲出性網膜剥離や乳頭浮腫、脈絡膜剥離をみとめます。
分類と病態
部位別に上強膜炎、前部強膜炎、後部強膜炎に分類されます。さらにそれぞれに形状別にびまん性、結節性、壊死性に分類されます。前部強膜炎の壊死性タイプは炎症性、非炎症性、穿孔性軟化症の3タイプに分類されます。
非感染性か感染性か
非感染性強膜炎の主な関連疾患を示します。
膠原病などの炎症性全身疾患
関節リウマチ
血清反応陰性脊椎関節症
炎症性Bowel病
Wegenear肉芽腫
結節性多発性動脈炎
ベーチェット病
側頭動脈炎
高安病
SLE
再発性多発性軟骨炎
サルコイドーシス
感染性全身疾患
単純ヘルペス
水痘帯状ヘルペス
梅毒
ライム病
結核
らい病
治療
非感染性強膜炎の治療
びまん性強膜炎と軽症の結節性強膜炎はベタメサゾン点眼から開始します。
効果が不十分な場合はシクロスポリン点眼を追加します。
重篤な結節性強膜炎と壊死性強膜炎および後部強膜炎にたいしては局所投与のみでは治療効果は期待できません。プレドニゾロン内服をして、反応を見ながら漸減します。ステロイド内服に反応の悪い例や再燃を繰り返す例には、サイクロフォスフォミド、メトトレキセート、シクロスポリンなどの免疫抑制剤の内服を併用します。
感染性強膜炎の治療
術後や外傷後の細菌感染や真菌感染による強膜炎に対しては、感染組織の外科的切除および原因菌に感受性のある抗生物質の全身投与と局所投与を行います。炎症を抑えるには非ステロイドの点眼を使用し、ステロイドは避けます。